2015年02月13日

嵐山100km進軍 後編

続きです。
前回の記事はこちら。人物紹介はこちら

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何はともあれ出発。
塚本の駐車場を飛び出せば、そこはすぐに淀川CR(サイクリングロード)。前を走るゴルさん、ドテチン、ちむの3人の後に続きペダルを回していく。もう一人の参加者、アルベルトが太子橋合流になっているらしく、まずは10km先のその場所まで向かうことに。

改めて確認して頂きたい大きな前提として、納車日を含めず今日で自転車歴4日目である。
もちろん胸中にあるのは覚悟された圧倒的な死だけではなく、ロードバイクにがっつり乗れる嬉しさだとか本当に100km走れるかもといったワクワク感もある。実際に太子橋へ向かいながら信号も歩行者も気にせずグングンと進んでいく感覚はめちゃくちゃ気持ちいい。ママチャリだと結構必死になる20km/hを維持しても全然辛いと感じないし、ひょっとしたら余裕なのでは!?なんていう気持ちも芽生えてこないこともない。

はるちんキマってるやん!
こういう感じの人いるし何か速そう!
身長あるからサマになってるな!
そ、そうかな?でへへ…。
代わる代わるに褒められ浮かれまくる初心者ライダーいなはる。このときは気分よくこぎこぎしていたので気づくのが遅れたが、油断させて後ろから刺すという自転車乗りの常套手段だったということを身をもって知るまでに時間はかからなかった。

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太子橋で無事にアルさんと合流し、挨拶もそこそこに再び出発。
一行は変わらずスイスイと淀川沿いを遡上していくのだが、如何せんスイスイしすぎている気がする。

気がする、ではない。
先ほどまでは確かに20km/hちょっとでの巡航だったはずが、気がつけば手元のサイコンに表示された数字は23km/h、25km/h、27km/hと順調すぎるほどににカウントアップ。ついて行けないことはないが、息も上がり気味になり、疲労が最初の10kmと比較にならないペースで蓄積されていっているのを感じる。

ちょ、はやっ…!
時間が経つほどに速度の維持がキツくなるが、ほぼ気合いで足を動かし27km/hを維持。...おかしい。維持しているはずが徐々に前の4人との距離が開いていく。

うーん、アレは30km/h出てますね。
付いて行くのは無理じゃないですか。
そうですね。

前の4人に折られかけた心に自らトドメを刺し、ヘロヘロと速度を下げる。息を整えながら進んでいくと、後ろを気にしながら走ってくれていたのようで、追いつくまで速度を緩めてくれていた。

いや...、30とか...、ほんま、ムリ。
最初やからな。今日100km走ったら強くなるわ。
ほんまかいなと恨みがましくチームを見渡すが、息切れしているような様子はない。強くなれるというけど、そもそも完走できるのか。強くなる前に死んだら意味がないのではないか。死んで生き返ったら強くなるドラゴンボール的なアレなのか。

まあ普通100kmとかロードバイク初めた人が数ヶ月かけて目標にする数字やしな。
分かった上で連れてこないでほしい。
その後も引き離されては追いつくことを繰り返しなながら確実に距離を稼いでいく。
途中で気がついたことだけど、この「初心者を千切っては追いつくのを待つ」という方式。欠陥が多すぎる。

ついてくるんやで!
ひえぇ〜!頑張らないと〜!!(筋肉使いまくり乳酸溜まりまくり)
どんどん行くで!(ピューッ)
千切られた〜!追いつかないと〜!!(必死にこぎ続ける)
追いついてくるまでゆっくり行くか あ〜足が休まる
はぁ…はぁ…追いついた…
お、来たな!ほないこか!(ピューッ)
「」
そんなチャリ部からの法治国家では許されない理不尽極まりない洗礼を受けていると、今度は内側からの攻撃が始まる。今日一日を乗り越えるためにしっかりと摂った朝食が謀反を起こすというビッグハプニング。牙をむいた朝食たちが、淀川の下流から取水している皆様方へご迷惑をかけるという最悪の事態だけは回避できたが、心情的には内蔵がひっくり返った状態で走り続ける。

そこの橋渡ったら休憩!
その言葉が聞きたかった。それ以外の言葉は聞きたくなかったというほどの声が耳に届き、希望の光を浴びようと俯いたままだった顔を前に向ける。
目の前には坂。河川敷を走ってきた我々が橋を渡るためには堤防をかねている道路へ出なければならない。高い位置にある道路へ出るためには坂を登らねばならない。わずか数十メートルとはいえ、足はすでに完売御礼。復路に使う予定の足もすでに予約販売が終了している大ヒット状態。仕打ちに泣きそうになりながらも何とか登りきり、橋を渡る。もうすでに橋の傾斜ですら勘弁願いたいが(橋はゆるいアーチを描いているので若干の傾斜がある)、もう視界に入っている休憩地点に倒れこむために力を振り絞り、到着。

ちょうど木津川・宇治川・桂川が合流して淀川と名を変える地点である御幸橋だ。

自転車から降りるとまともに歩けない。
ジョギングなど地面を蹴り続けて「もう歩けないよ〜」となれば分かりやすいが、自転車は足で体を支えない、足に優しい乗り物だ。そのため歩くことができない状態であってもペダルは回せてしまうので、身体を使い切ったあとに自転車から降りると腰が抜けたように座り込んでしまうという事が起きる。というか実際に事が起きてる。
産まれたての小鹿にブッチギリで置き去りにされそうな速度でベンチにかじりつきしばしの休憩。

はるちんお水飲みや
おっけー
走りながらもこまめに水分は補給していたとはいえ、水の美味いこと美味いこと。というか道中しっかり飲んでいたのに身体が水をガンガンに受け入れ、どれだけ汗をかいていたのかと改めて実感する。そういえばウインドブレーカーの内側もビシャビシャになっていた。

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御幸橋の陽だまりにいたにゃんにゃん(自転車を撮れ)。

はるちんはるちん
なんや
お水飲みや
アイドルか
補給食も採り、嵐山まで残り20km。休憩で多少体力は回復したものの、変わらず置いていかれたり追いついたりしながら勢いのままに嵐山は渡月橋へ到着!!

togetsu.jpg

ワープで帰りたい。
もちろん片道約55kmの道のりを成し遂げ、大阪湾の河口から京都嵐山まで自分の足でたどり着いた達成感や感動はあるのだが、どうしても「帰り」のことが頭をもたげる。

ワープで帰りたい!!!!!!
喚いても仕方なく渡月橋近くのお店でお昼を済ませ、1時間ほどがっつりと休憩。

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全体的なだるさや足の疲れは残るものの、気持ち的にはだいぶ回復し今度はスタート地点の塚本を目指して再出発。帰りもまあしんどいだろうということは分かっているが、どれくらいのものか身をもって体験したので覚悟ができているのと、往路よりは距離感がつかめていることから幾ばくかは気持ちに余裕をもちつつ桂川を下っていく。

なんやこの風はあぁぁぁ!!!
直後、えげつない向かい風に襲われる。
往路で25km/hくらいで出していた力で走っているつもりがサイコンが示す数字は20km/hを余裕で下回っている。空気抵抗やらそういった話は色々と聞いていたけど、ここまでのものかと肉体言語で教え込まれつつ文字通り逆風の中を必死に進んでいく。

実は往路でもロードバイク界隈でよく聞く「引き」というものを実践していたのだが、平均で25km/h出ていたか出ていないか程の巡航だったのでそこまで恩恵というものを感じなかった。しかしこの逆風、引いてもらう/風除けがいるということのありがたみをまじまじと感じる。前に人がいるといないとでは本当に同じ力で踏んでも5km/hは変わるんじゃないだろうか。
風の勢いは止まず、むしろ横風も加わり心がボキボキと折れていく中で、チャリ部の皆に「いなはるを無事に送り届ける」というオーダーが発生。前二人、斜め前一人、横に一人の完全包囲網でVIP引きをして貰いながら淀川に入り、南下していく。

休憩を挟みつつ順調とはいえないが着実に距離を稼いでいく。が、残り20kmあたりから身体に異変が出始めた。
まず左膝が痛み出す。はじめは違和感程度だったが徐々に痛みが増し、クランクを回すごとにビキッ、ビキッと痛みが走る。次に腰。寝違えたあとのような、少しでも変な力が加わると痛みと疲労を混ぜたような感覚が襲い掛かる。さらに尻。尾てい骨のあたりがズキズキと痛み、路面が少しでも荒れていようものなら皮膚から骨を通り骨盤まで酷い痛みが走る。尻の痛みを和らげようと腰を浮かすと膝に負担がかかり、膝をかばうようにサドルに重心を落とすと尻が悲鳴を上げる。それぞれポジションを替えようとすると腰が砕け散るという痛みの三すくみ状態に陥り「あふっ、あふっ」と変な声を漏らしながらペダルを回し続ける。

あと1kmや!
・・・マジか!!
だんだんと陽も落ち、すれ違う自転車もライトを点け始める頃になってゴールが見えてくる。痛みは消えないが、あとちょっとでこの痛みから解放されると思えば気持ちも軽くなる。周りも暗くなり、どのあたりを走っているのかよく分からないがとにかくゴールが近い!!

10分後。

・・・?
かなりペースが落ちているとはいえ、15〜18km/h程度は出ている。10分も走れば1kmどころか2kmは確実に進んでいるはずだが…。

あと1kmや!
・・・!
こいつら!こいつらまた嘘を吐いている!!

hitodenashi.jpg
心の中で思いつく限りの罵倒を浴びせながら本当は残り何kmかわからない道を走り続ける。ところが雑談を聞いていると(こちらは言葉を発する気力もない)どうやら今度こそ本当にゴール、前方に影が見えている橋がスタート地点であった塚本になるらしい。
やりとげた、死ぬかと思ったけどみんなと一緒にゴールできる!

と思ったのもつかの間、突然開催されるゴールスプリント。食らい付くなんていう発想すらなく、ただ遠く消えていくテールランプを見送る。ここで完全に心は折れ、巡航速度は10kmあるかないかというペースで「もう何時になってもいいや」とふらふら進んでいく。

そして、ゴール。
身体が勝手にインターハイの三日目に御堂筋くんを限界まで引いた石垣くんのモノマネを始めるのであった。

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走行距離:112.7km
移動時間:5時間49分
posted by いなはる at 00:07| Comment(0) | ライドレポ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする